
【新型コロナとまぎらわしい症状】嗅覚・味覚が唯一の症状だった患者は3.0%
文責: 大倉 遊
SG. Spinato, et. al. Alternations in smell and taste in mildly symptomatic outpatients with SARS-CoV infection. JAMA, April 22 (online), 2020.
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2765183
イタリアから報告されたCOVID-19感染患者の味覚・嗅覚障害についての論文
####要点
- 2020/3/19-2020/3/22 イタリアの病院での報告
- 軽症のPCR検査陽性COVOD-19患者204人が対象
- 嗅覚・味覚の変化が見られたのは64.4%
- 女性の方が男性より嗅覚・味覚障害が多かった(72.4%対55.7%)
- 鼻閉は34.6%
- 最初に嗅覚・味覚の異常が起きたのは11.9%
- 他の症状と同時が22.8%
- 他の症状が先行したのは26.7%
- 嗅覚・味覚障害が唯一の症状だった割合は3.0%
####コメント
嗅覚・味覚異常は代表的な症状のひとつです。
64.4%もの患者が嗅覚・味覚異常を訴えております。また、症状の中央値は「重症」レベルとの結果が出ているので、症状出現時は比較的強い症状として現れているようです。
ただし、症状が嗅覚・味覚異常単独である頻度は3.0%と低く、多くの場合は疲労感や咳、発熱などの症状も生じるようです。
嗅覚障害、味覚障害しかない状態が長く続く場合は、新型コロナウイルスの感染の可能性よりも、
- 亜鉛欠乏
- 薬の副作用
- 肝障害
- 腎障害
- 糖尿病
- 消化管切除の影響、炎症性腸疾患
- 甲状腺機能低下症
- 舌炎、唾液分泌障害
- うつ病、神経症
- 脳血管障害、聴神経腫瘍
- 耳鼻科領域の末梢神経障害
- 風邪のあとの変化
などを疑う方が良いかもしれません。
耳鼻科の先生にお願いしなければならない病気も多いですが、当院でも亜鉛、肝機能、腎機能、糖尿病、甲状腺、大腸カメラなどの検査は可能です。
薬剤性の味覚障害については、下記厚生労働省のマニュアルがあります。
薬物性味覚障害|重篤副作用疾患別対応マニュアル|厚生労働省
これによると、
- 睡眠薬、抗不安薬
- 解熱鎮痛剤
- 精神神経用の薬
- 目薬
- 不整脈、血圧の薬
- 喘息の薬
- 胃酸を押さえる薬
- 甲状腺の薬
- 利尿剤
- 脂質異常症(高脂血症)の薬
- 糖尿病の薬
- アレルギーの薬
など、実に様々な薬で起きうることが分かります。
もちろん、これらの薬を飲んだら高確率で味覚障害起きる、ということではありませんが、一応疑ってみる必要はあるかもしれません。
消化管切除後の様々なトラブルについては、私の外来(大倉医師の消化器外科外来)でご相談ください。
オンライン診療について
新型コロナウイルス感染拡大に伴って、オンライン診療の規制が一時的に緩められており、初診でも薬が処方できるようになっています。
ただ、紹介状などがない限り、7日分しか処方ができない規則となっています。
実際には、1週間ごとに薬の変更を検討した方がよいことが多いため、あまり問題になることはないように感じています。
薬は自宅近くの薬局で受け取れるため、物理的な距離が問題にならないのはとても良い点です。
当院でも、全国の微熱の患者さんをオンライン診療で診察しています。