
【新型コロナの予防】BCGを打っていてもいなくても陽性率に変わりなし
文責: 平畑 光一
SARS-CoV-2 Rates in BCG-Vaccinated and Unvaccinated Young Adults
Uri Hamiel, et al. JAMA. Published online May 13, 2020. doi:10.1001/jama.2020.8189
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2766182
非常に似たグループを対象に、BCGの接種歴の有無で新型コロナの検査の陽性率が違うかを比較した論文です。
####要点
- イスラエルは1982年にBCG接種をやめた
- その前後それぞれ3年で産まれた人、合計約6千人のデータを比較
- 咳・呼吸苦・発熱などがあった人の新型コロナPCR検査の結果を利用
- BCGを打っている年代の人たちの陽性率:11.7%
- BCGを打っていない年代の人たちの陽性率:10.4%
- 重症になった人はそれぞれのグループに1人ずつしかいなかった
- 亡くなった方はいらっしゃらなかった
####コメント
とりあえずBCGを打っていても新型コロナの予防にはならなさそうです。
論文にも書かれていますが、今回の調査対象では重症者が極端に少ないため、「BCGが重症化の抑制や死亡率の低減に役立つ可能性」については、この研究で言及することができません。
ただ、日本のBCGは、赤ちゃんにギリギリ届く量しか作られておらず、増産も難しいとのことですので、効果がなさそうで安全性も不明なのに、成人が利用するようなことは厳に慎まなければなりません。
製造元の日本ビーシージー製造株式会社からも下記が公開されています。
日本ビーシージー製造株式会社 BCGワクチン接種に関するお願い(第二報)
乳児へのBCG ワクチンの安定供給が影響を受けるような事態だけは、絶対に避けねばなりません。
当然ながら、当院ではBCGの接種依頼は全てお断りしています。
(BCGは特殊な投与方法の注射ですので、小児のBCGは小児科で受けていただくようにお願いしています。)
(補足)
Nigel Curtis et al. Considering BCG vaccination to reduce the impact of COVID-19
Published:April 30, 2020
DOI:https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)31025-4
この論文によると、オランダとオーストラリアで無作為比較試験が走っているようです。
なお、この論文の中でも「無作為比較試験以外でBCGを受けるのは本当にやめた方がいい」と書いてあります。
オンライン診療について
新型コロナウイルス感染拡大に伴って、オンライン診療の規制が一時的に緩められており、初診でも薬が処方できるようになっています。
ただ、紹介状などがない限り、7日分しか処方ができない規則となっています。
実際には、1週間ごとに薬の変更を検討した方がよいことが多いため、あまり問題になることはないように感じています。
薬は自宅近くの薬局で受け取れるため、物理的な距離が問題にならないのはとても良い点です。
当院でも、全国の微熱の患者さんをオンライン診療で診察しています。