新型コロナ感染症・後遺症の記事

2020/12/28更新

新型コロナ後遺症と倦怠感

新型コロナ後遺症と倦怠感

当院の新型コロナ後遺症患者さんの訴えで、一番多いのが「だるさ」「倦怠感」です。
当院の統計では、97.1%の患者さんが倦怠感を自覚されています。(2020/12/23時点)

最も怖いのはPEM(Post-exertional malaise)

PEMとは

軽い労作後や、ストレスのあと、6時間~48時間後に急激に強い倦怠感が出てしまう、という症状。

典型的な症状

近所への買い物や、パートナーとの喧嘩などの後、直後は大丈夫なのに、その数時間後または翌日になってから、急激にだるくなる、などが典型的。

紛らわしいがPEMではない症状

  • 毎日夕方になるとだるい
  • 仕事などで体を動かした後、直後からずっとだるさが続く

などはPEMではありません。

PEMがある場合

  • 症状が多彩
  • 治療に時間がかかる
  • 少しの無理で急激に調子が悪くなることも多く、丁寧に、しなくていい運動はすべて避けて、安静に過ごすことが大事

頑張って動いたあとに数日間寝込んでしまうことを「クラッシュ」と言いますが、クラッシュを起こすとできることが減ってしまい、寝たきりに近づいてしまうことがあります。クラッシュをできるだけ起こさないように生活することが、治療上、最も大切です。

クラッシュについて

  • クラッシュの定義は難しいですが、鉛を背負ったような、尋常ではない倦怠感がでたらクラッシュを疑います。
  • 強いだるさが出たら、「その前にかかった負荷は現時点では大きすぎた」と考えて、負荷を軽減または分散するようにしてください。
  • 「1回でやるとだるくなるが、休憩を入れて2回に分ければ大丈夫」「2日続けてやらなければ大丈夫」といったことはよくあります。
  • クラッシュが起きない状態を半年くらい続けると、すこしだけできることが増えます。
  • 「1回クラッシュしたら取り返しがつかない」といったことはありません。

PEMがない場合

  • 調子が良くなった後であれば、少しずつ様子を見ながら、BCAAをとりながらであれば運動が可能なことが多い
  • 数か月以内にかなり改善することも多い
  • それでも強い運動は禁止

治療

BCAA

  • 必須アミノ酸であるバリン・ロイシン・イソロイシンの総称。
  • 運動時の筋肉のエネルギー源
  • 筋肉の蛋白質に非常に多く含まれている
  • PEMがあってもなくても、BCAAは効くことが多い

製品紹介

  • アミノバイタルアクティブファイン

    • 手に入りやすく、値段と味がそこそこ
    • 濃い目に溶かして飲んでいる人が多いです
  • アミノバリュー

    • 仕事や勉強、作業をしながら飲むのに向いている
    • 無色透明なので、ラベルをはがせば水に見える
    • 添加物が少ないので化学物質過敏症の方でも飲める場合がある

比較的高価なので、海外製のものをチョイスされる方もいらっしゃいますが、それでもまったく問題ありません。
添加物が苦手な場合は、無添加のものを利用することを検討してください。

使い方

  • アミノバイタルアクティブファインは1日3本を目安に飲んでいただきます。(もっと飲んでも大丈夫です)
  • 動いた直後・頭を使った直後・体が痛むときなどに使うと効果的です。
  • すぐに効果を実感される方も多いですが、長期間飲まないと効果が分からない方もおられます。

BCAAが効く症状

  • 倦怠感
  • 筋肉痛
  • ブレインフォグ(思考力の低下、集中力の低下、記憶力の低下、頭に霧がかかったような感じなど)
  • 筋肉のピクつき
  • 血管痛

漢方

  • BCAAよりは根本に近い部分の治療が可能
  • その方のその時の状態に合わせて薬を使う
  • 合う薬が見つかるまでいくつか試すため、時間がかかることがよくある
  • 保険適応であれば比較的安い(当院は保険適応のエキス剤のみ処方しています)
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亜鉛のサプリ

  • 当院では、脱毛・嗅覚障害・味覚障害のいずれかがある患者さんに勧めていますが、倦怠感に効く方もいらっしゃるようです
  • 安いので使いやすい
  • ネイチャーメイド亜鉛 1錠10mgで用量調節がしやすいのでこれをお勧めすることが多いですが、他のものでも構いません
  • 本来は採血で血液中の亜鉛のレベルを測りながら使いたいけれども、10~30mg/日で飲む分にはまず問題ないものと思います

コエンザイムQ10

  • 筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)でも一応のエビデンスがある
  • 使うならカネカ社製のものを200mg/日で摂るといいらしい
  • 劇的に効いたという患者さんはあまりいない印象
  • 高いので続けにくい

体を温める方法

体を温める治療法も試す価値があります。
(合わない方もいらっしゃると思いますので、少しずつ試すようにして、合わなければ避けてください。)

和温(Waon)療法

非常に有名な治療法で、慢性心不全、ME/CFSなどで多数の論文があります。
施行している施設まで行かなければいけないのが最大の難点。(自宅での簡易的なやり方は下記の通り)
合わない方もいらっしゃいます。

  • 急性心不全を防ぐ入浴法「和温療法」の効果とやり方|ケンカツ 自宅でのやり方が書かれています。概略は下記の通り。

    • 脱衣所をしっかり温める
    • 41度のお湯を張り、半身浴または体を伸ばして10分つかる
    • 肩が冷えるようならタオルをかける
    • お風呂から出たらすぐに毛布などで体を30分温めて休む
    • のどの渇きを潤す程度に水を飲む

ペットボトル温灸

湯たんぽ

  • 治療 Vol.89, No.1 2007.1の班目先生の論文を参照しました。
  • 朝起きた時に脇の下に手を挟んで温めた後、腹部、おしり、太ももの前側、腕の外側を触って、冷たいところがあったらそこが冷えていると判断して、その部分を重点的に湯たんぽで温めると良いとのこと。
  • 寝る時だけではなく、朝から使うのが良い
  • 汗をかくと冷えてしまうので、汗をかかないように使うのがポイント
  • お尻を温めるには、イスの背もたれに置いて、腰からお尻を温めるようにするのが良いとのこと
  • 3週間でPSが5→2に改善した患者さんもおられるとのこと
  • 「首のスジを押す」と超健康になる|班目健夫 この本に詳細が載っています。ME/CFSの治癒率云々の部分と、実際受診した時の料金が高いのがアレなんですが、内容は大変参考になります。
湯たんぽ関連商品

昔ながらの湯たんぽが一番というお声も多いですが、お手軽に使えるものもご紹介します。


Bスポット療法(EAT療法)

  • 施行している耳鼻科を探さないといけないが、受けられるところが最近増えている印象
  • 慢性上咽頭炎を併発しているときに有効
  • 慢性上咽頭炎を起こしているかは自分ではわからないので、とりあえず受けてしまうのが良い
  • 保険でやっているところと、自費でやっているところがある
  • それなりにつらい
  • 行けない場合は、とりあえず鼻うがいだけでもやっておくとよいかもしれません


鍼灸

鍼灸の流派にもいろいろあり、相性もあるので、自分に合うところを探さないといけないのが難点ですが、効いたという方はたくさんおられます。
なんとか置き鍼・せんねん灸太陽で治療できないもんか、と思っています。


遠絡療法

  • 筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労(ME/CFS) の治療としても広く行われているようです。施行できる施設は限られますし、自費診療になるので高額になりがちですが、効果はあるようです
  • 治療との相性、先生との相性はある

rTMS

  • とても高価なことが多いのと、受けられる施設が限られているのが難点。
  • 副作用は少ない様子。

ここに挙げたもの以外にも効くものがありそうなので、今後研究を進めていきます。