膵臓の「未病」について

2020/08/03更新

お酒がなかなかやめられない

特に症状のある方の場合、通常は「痛み」が「恐怖」となって、すぐにお酒が辞められることがほとんどなのですが、長年お酒をたくさん飲まれてきて、なかなかお酒がやめられない方も少なからずおられます。
この章は、そういう方向けに書いています。お酒がすぐやめられる方には、この章は必要ありません。今すぐお酒をやめていただけばいいだけです。

まずは簡易検査

AUDIT という、広く行われている問診があります。まずはこれを試してみてください。正直に答えないと、全く意味がありませんので、カッコつけずに答えるようにしてください。

答えられましたか?

何点でしたでしょうか。
これ、50歳の男性の平均点は何点くらいだと思いますか?
20点くらい?
全然違います。9点です。
15点だとだいぶひどい飲み方をしているので要注意。
21点だと、そろそろ一応精神科も検討しましょうか、というレベルになります。
そして残念なことに、21点以上の方は、たとえ膵臓がなんともなくても、いずれお酒をゼロにしていかないといけない人、ということになっています。(少しでも飲んでしまうと、日を追うごとにどんどん飲んでしまうようになることが多いからだと思います。)

お酒のやめ方

何千回失敗してもいい

ここを読まれている方は、なんらかの症状(もしくは検査値の異常)を持っておられる方がほとんどかと思います。もしそうであれば、最大限、その症状や異常値を「利用」してしまいましょう。「異常も出てるし、これは体からのサインだから、これを機にお酒を卒業して行こう」と決意してしまうことです。その際、とてもとても大切なことがあります。それは、

何千回失敗してもいい

ということです。
もちろん、ほんとは失敗しない方が良いのですが、必ずしもそれができる方ばかりではありません。特に、長年たくさん飲まれてきた方の場合や、AUDITが21点以上の方は、お酒をやめたいと思ってもそう簡単にできないことがほとんどです。「今日こそは」と思っても、飲んでしまう。でも、本当の勝負は、「飲んだか飲まなかったか」ではありません。飲んでしまった後、「よし明日からまた頑張るぞ!」と心から決意することです。それを繰り返している方は、徐々にやめていくことができます。「このくらいいいじゃん」と思っている方は、どんどん悪くなります。ですから、「失敗した後に決意できるかどうか」が本当の勝負なんです。

ハードルは限りなく低く

実は、お酒を辞めるとき、一番障害になるのは、「自分にはどうせお酒をやめることなんて無理だ」という無力感です。高いハードルを設定してしまうと、「またできなかった」という気持ちが重なって、「どうせ無理」という気持ちが強くなってしまい、最終的に「自分の健康をあきらめる」ということになってしまいかねません。ですから、ハードルは限りなく低く設定しましょう。「この位なら余裕で達成できるな」というハードルを、さらに低くすることが大切です。

たとえば、1日3Lのビールを飲んでいる人がいるとしましょう。もし、「1日2Lまでは余裕で減らせる」と思ったとしても、「2.5L」を目標にした方が良いかもしれません。「最後の一口を捨てる」だけでもいいかもしれません。とにかく、「できた!」という体験を繰り返す必要があります。それでも失敗してしまう日はあるでしょう。それでまったく問題ありません。でも、大切なことが一つあります。

必ずカレンダーか手帳に、できた日を記録してください

記録していれば、「出来ていなかった日も結構あったけど、できた日もある」と思えます。記録していないと、「できなかった日ばかりだった」と、マイナスのイメージだけが先行してしまうことがあります。せっかく頑張ったのに「無かったこと」になってしまうことがあるんです。ですから、しっかり記録して、ときどき見返して、「自分にはできる」「自分は戦える」と言い聞かせて下さい。1か月に1回しかできなかったとしても、それでいいんです。ゼロじゃないですから。それをとっかかりに、頑張りましょう。

自然に減らす工夫

お酒を楽に自然に減らす方法もいくつかあります。そのうちの一つは、お酒の合間に、ノンアルコール飲料やソフトドリンク・水などを入れていく方法です。お酒の合間にそういうものを入れていくことで、お腹がいっぱいになり、無理なく、自然にお酒の量を減らすことができます。

おススメのノンアルコールビール

あなたがビール党なら、しめたもの。今は美味しいノンアルコールビールがたくさんあります。本場ドイツでも、ノンアルコールビールがブームだそうで、色々おいしいノンアルコールビールがあるようです。「ノンアルコールビールなんておいしくないよ」とおっしゃる患者さんもたくさんいらっしゃるのですが、2~3種類しか試していないことがほとんど。特に、よく売っている「○○も○○もゼロ!」みたいなものは、あまりおいしくないようです。当院の患者さんに人気なのは、下記の通り。

他にもおいしいノンアルコール飲料の情報がありましたら、ぜひお寄せください。

だれも「飲んでほしい」とは期待していない

「付き合いがあるからお酒がやめられない」という方も、たくさんおられます。ただ、ごく一部の方(中國で商売をしていて、どうしても老板との付き合いで飲まないと商売にならないとか)以外は、実は「お酒を飲んでほしい」と期待されていることはあまりありません。周囲の方が期待しているのは「仲良くなりたい」「元気で働いてほしい」「会に来てもらってお話がしたい」ということ。
「お酒を飲んでほしい」なんて実は思っていないし、まして「体を壊してでもたくさん飲んでほしい」なんて微塵も期待していないんです。たくさん飲まれたら割り勘にした時高くなっちゃいますし。今の若い人は、飲み会に行っても全然飲みません。それでも誰も何にも言いません。「飲みたくなければ飲まなくていい」というのが当たり前になっています。ですから、安心して「最近胃腸が弱いから控えてるんだ」といった言い方をしてみてください。拍子抜けするくらい何にも言われないことがほとんどです。

「飲み友達」は「友達」じゃない?

ただ、実は例外があります。それは、相手がアルコール依存症の傾向性を持っている場合。
当院には、たくさんのお酒のみの方が来られますが、ほとんど全員が同じことをおっしゃいます。

「自分は、自分の周りよりは飲んでいない」

実は、どこかしら自分よりひどい飲み方をしているところを見つけて、「あの人よりはマシだ」と思っているんですよね。「あの人はテキーラみたいな濃いお酒を飲んでいるが、自分はそれをしないからマシ」とか「自分は昼間から飲んだりはしない」とか「あの人みたいに一気に飲んだりはしない」とか、いろいろ理由を見つけて、「自分はマシ」「まだ大丈夫」と思いこもうとする。ある意味で、相手を「自分はまだ大丈夫だから飲んでいていい」と思うための「道具」として使ってしまっているところがあるわけです。

そういう「飲み友達」に「医者にお酒を止められてしまったので今日は飲まない」などと告げると、どうなるでしょうか。「自分は飲んでいても大丈夫なんだろうか」と不安になってしまい、「少しくらい大丈夫だよー」「飲んでくんないとつまんないよー」と言い出します。それで相手が飲んでくれれば大満足。「医者に止められてるのに飲んでいるこの人より、自分の方がマシ」と思えるからです。逆に、お酒を勧めても飲んでくれなかったら、「おいしく飲むための道具」として使えなったと判断されて、ほとんどの場合は疎遠になってしまいます。
キツイ言い方になってしまいましたが、これは、その「飲み友達」がひどい人だからではありません。「アルコール」という「薬物」の依存性が強すぎて、「知り合いの命」よりも「自分がお酒をおいしく飲みたい」という気持ちが勝ってしまうからなんです。これが薬物の恐ろしさです。

「医者に止められちゃってさ」と言った時、心配してソフトドリンクを勧めてくれる人は本当の友達です。アルコールを勧めてくる人は、自分を「道具」だと思っています。厳しい話ですが、これは本当の話です。本当の友達を、大切にしてください。

おススメの本

お酒をやめるにあたって、とても参考になる本がたくさんあります。ここではその一部をご紹介いたします。

どれもとても素晴らしい本ですので、ぜひお手に取ってみてください。