膵臓の「未病」について

2020/08/03更新

薬物療法

 膵臓が弱い方、敏感な方に、当院でよく処方する薬剤を紹介いたします。

消化酵素

 消化酵素は、膵臓で作る消化酵素を、あらかじめ飲んでしまうことで膵臓の負担を下げる目的で用います。
当院では、「食後に症状が出やすい方」に処方することが多いです。

  • エクセラーゼ
  • ベリチーム
  • リパクレオン

 この3種類を主に処方しています。
消化酵素は、人によってアレルギーがあることがあり、副作用が出るようなら一旦内服をやめていただき、落ち着いたところで違う消化酵素を試すか、違う系統の薬を試すか検討します。
また、食欲が異常に増えることがあるため、その点も注意が必要です

リパクレオン

 リパクレオンに関しては、保険の縛りがきついため、慢性膵炎の方以外では処方できないことがあるかもしれません。
値段も高価であり、最初に使うべき薬剤ではないと考えています。
他の薬が効かなかった時に使う、というのが一般的でしょう。
なお、リパクレオンは薬効が強いですが、効果の立ち上がりは比較的遅いことが知られています。

フオイパン(カモスタットメシル)

 当院では、血液検査で異常値が出ない方には処方できない薬剤です。
膵液に含まれる消化酵素が膵臓自体を攻撃するのを抑える作用があります。
よく効く人もいますが、あまり効かない人も少なくなく、決して「魔法の薬」ではないなぁ、という印象です。
相性に応じて処方すべきと考えています。
最大で1日6錠まで内服が可能です。

漢方薬

 当院では、「柴胡剤」といわれる漢方薬の中から、証や症状をもとに漢方薬をチョイスすることが多いです。
よく使うのは、

  • 柴胡桂枝湯
  • 柴胡桂枝乾姜湯
  • 柴胡加竜骨牡蠣湯
  • 大柴胡湯
  • 補中益気湯

あたりでしょうか。
漢方はとても奥が深いので、なかなか簡単に説明できないのですが、今のところの目安としては、
冷え性があったり、脈が弱かったりする患者さんには「柴胡桂枝乾姜湯」
不眠や悪夢などがあり、脈が弱くない患者さんには「柴胡加竜骨牡蠣湯」
便秘があり、脈がしっかりしている患者さんには「大柴胡湯」
胃腸も弱く、脈が弱い患者さんには「補中益気湯」
最も頻用しているのが「柴胡桂枝湯」
といった感じで処方しています。

痛み止め

 痛みのために「自分はとてつもなく悪い病気なのではないか」「実は癌で、死期が迫っているのではないか」などと不安になってしまう患者さんが多いのですが、一方でなかなか「すぐに痛みが止まる魔法の薬」はないのが実情です。
よく使うのは下記3種類。

  • NSAIDs(いわゆる普通の鎮痛剤)
  • ブスコパン
  • コスパノン

いずれも「効いたらいいですね」という感じです。
どの薬が効くは人によって違ってきますので、試してみるしかありません。
また、痛みが治まっても「治った」わけではないので、「無理はできない」ことに変わりはありません。

安定剤

 不安が強すぎて、そのストレスで膵臓の調子が悪くなってしまっている人もいます。
そういうことが疑われる場合は、ベンゾジアゼピン系などの安定剤を利用することがあります。
食欲低下も伴っている場合は、ドグマチールを処方することもあります。

睡眠薬

 睡眠不足、睡眠の質の低下も膵臓の症状の原因になってしまいますので、不眠症の方などには睡眠薬を処方することもあります。