新型コロナ感染症・後遺症の記事

2020/05/16更新

【ハーバード大の論文】アメリカでは2022年まで活動制限が必要な可能性

文責: 大倉 遊

####論文 Kisller et al., Projecting the transmission dynamics of SARS-CoV-2 through the postpandemic period. Science 14 Apr 2020:eabb5793 DOI: 10.1126/science.abb5793
https://science.sciencemag.org/content/368/6493/860

アメリカでの今後のCOVID-19感染について予測したハーバード大学公衆衛生学部の論文です。

####要点 #####仲間のウイルス

  • 新型コロナウイルスはベータコロナウイルスの一つ

  • 人類に感染する他のベータコロナウイルスは、SARSウイルス、MERSウイルス、普通感冒ウイルス(HKU1、OC43)の4種類

#####普通感冒が封じ込め困難な理由(新型コロナも同様?)

  • SARS、MARSは、致死率も高く、感染者の同定と隔離により封じ込めに成功した

  • 症状発現から病院受診までは平均1.2日(0.2日-29.9日)

  • 普通感冒ウイルス(HKU1、OC43)は無症状~軽い風邪の症状のみの場合がほとんどのため、封じ込め困難

  • 普通感冒ウイルス(HKU1とOC43)に対する抗体は、1年くらいで消失するため、普通感冒は毎冬、流行を繰り返している

  • 新型コロナウイルスも、HKU1やOC43と同様に、感染者の多くは無症候か軽症のため、感染者の同定と隔離による封じ込め困難な可能性あり

#####重要な因子は抗体の寿命 新型コロナウイルスに対する抗体がどの程度持続するかによって、今後のシナリオがかなり変わります。

  • 抗体の寿命が1年程度&対策を何も取らない → 毎年大流行を繰り返す
  • 抗体の寿命が2年 → 隔年で大流行する
  • 抗体の寿命が半永久的 → 今回のパンデミックので感染は終息する
    ただし、人口の半分以上が感染し、医療崩壊につながる可能性あり

#####活動制限の長さと流行の予測

  • 強力な活動制限を行うと、医療崩壊を防げるが、活動制限を解除で数か月後にはまた大流行が起こり、医療が崩壊する
  • 活動制限を継続すると、流行も医療崩壊も抑えることができるが、長期の活動制限は社会や経済崩壊をもたらす。
    また人口に占める感染者の割合が増えず集団免疫が成立しないため、活動制限を中断すると、すぐに大流行が起こる状態が続く
  • 医療崩壊を防ぎ、しかも徐々に感染者を増やして集団免疫を成立させるためには、活動制限を断続的に行う必要がある

####コメント 現在の外出自粛の徹底はアウトブレイクを抑える効果はあるが、集団免疫獲得につながらないので、集団免疫獲得は2022年まで掛かるかもしれないと予測したハーバード大学の論文です。つまり年単位の長期的な戦いになるとの厳しい予測です。

ここでは新型コロナウイルスへの抗体の寿命を半永久と仮定していますが、普通感冒と同様に1年程度で抗体が消失する場合、さらに状況は厳しくなります

医療体制の整備、治療薬やワクチンの開発が待たれるとともに、長期の活動制限を強いられる方に対する経済的支援が必須です。

日本では欧米諸国のような爆発的な感染は起こっておりませんが、活動制限の緩和で第2波、第3波が来る可能性も十分に考えられるため、ある程度長期的な戦いを強いられることを常に念頭に置く必要があります。 2020年5月16日現在、ここ数日の東京の感染者数は10名前後で推移していますが、厳重な警戒を継続するようにしてください