
2020/05/31更新
【新型コロナと他疾患】がん患者における新型コロナ感染重症化リスク
文責: 積山 慧美里
がん患者さんの新型コロナウイルス感染の重症化リスクは高いと考えられていますが、その臨床的特徴については不明確でした。
中国武漢市の3病院のデータを解析した論文について、解説します。
####要約 対象・方法
- 中国武漢市の3病院のデータを対象とした後向きコホート研究
- 2020年1月13日~2月26日の期間に新型コロナウイルス感染症と診断された癌患者28例(全症例において抗腫瘍治療歴あり)
- ICU入室・人工呼吸器使用・死亡と関連するリスク因子を評価
- 肺癌患者が7例(25.0%)で最多
- 院内感染が疑われた症例は8例(28.6%)
- 6例(21.4%)はCOVID-19感染診断14日以内に抗腫瘍治療を受けており、1例は抗癌剤と免疫療法を併用していた
主な臨床所見
- 発熱(82.1%)
- 空咳(81%)
- 呼吸困難感(50%)
- リンパ球減少(82.1%)
- CRP高値(82.1%)
- 貧血(75%)
- 低蛋白血症(89.3%)
貧血/低蛋白血症以外は一般集団と同様。
主要な胸部CT画像
- すりガラス影(75.0%)
- 斑状浸潤影(46.2%)
一般集団と同様。
結果
53.6%に重症イベントを合併し、死亡率は28.6%
重症イベントのリスクが高い傾向として下記要因があげられています。
- 14日以内の抗がん剤投与(HR 4.079, P=0.037)
- 胸部CT画像にて斑状浸潤影出現(HR 5.438, P=0.010)
####コメント
今回の結果ではがん患者さんの50%が重症化しており、特に抗がん剤投与後14日以内は重症化リスクが4倍も上昇しています。
現在抗がん剤治療をされている方は、極力他者との接触を避け、自宅安静が大切です。
また上記の症状を認めた場合は早めに対処しましょう。
オンライン診療について
新型コロナウイルス感染拡大に伴って、オンライン診療の規制が一時的に緩められており、初診でも薬が処方できるようになっています。
ただ、紹介状などがない限り、7日分しか処方ができない規則となっています。
実際には、1週間ごとに薬の変更を検討した方がよいことが多いため、あまり問題になることはないように感じています。
薬は自宅近くの薬局で受け取れるため、物理的な距離が問題にならないのはとても良い点です。
当院でも、全国の微熱の患者さんをオンライン診療で診察しています。