
COPDについて
COPDについて
COPD(chronic obstructive pulmonary disease)とは、タバコ煙を主とする有害物質を長期間吸入することで生じた肺の炎症性疾患です。
一般に
- 「タバコ肺」
- 「肺気腫」
とも呼ばれます。
疫学
- 日本人のCOPD有病率は8.6%
- 40歳以上の約530万人
- 70歳以上の210万人
が罹患していると考えられていますが、大多数が未受診・未治療であるとされています。
2018年の統計では男性の死因第8位を占めています。
原因
- COPD患者の約90%が喫煙者です。
- 喫煙者の15-20%にCOPDを発症します。
発症率は年齢や喫煙量とともに増加し、
- 高齢喫煙者では約50%
- 60箱/年以上のheavy smokerでは約70%
にCOPDを発症するとの報告もあります。
煙草炎により炎症が惹起され、末梢気道・胚胞レベルの破壊、構造改変により、呼吸機能障害(息を吐きづらくなる)をきたします。
(希に非喫煙者でもCOPDを発症する事がありますが、遺伝的要因や低出生体重や小児時の肺炎による肺の低発育が関与している可能性が示唆されています。)
症状
労作時呼吸困難(息切れ)、湿性咳嗽(痰がらみの咳)、痰が出現し、経過とともに徐々に進行します。
特に労作時呼吸困難が出現すると急激に進行する場合が多いです。
病院では
- mMRC
- CAT
などの問診表を用いて客観的に自覚症状を評価します。
検査
呼吸機能検査
- 1秒量:FEV1.0(1秒間で吐ける息の量)
- 努力肺活量:FVC(最大努力で呼出した時に吐ける息の量)
これらを測定し、比率(FEV1.0/FVC)70%未満をCOPDと確定診断します。
胸部画像検査
- 胸部X線:ある程度病気が進行した場合において様々な所見が出現します。
- 胸部CT:通常肺内に多発する気腫を認めます。
全身合併症
COPDは長期の喫煙歴がある中・高齢者に発症するため、喫煙や加齢に伴う合併症を多く認めます。
また、COPD自体が肺以外にも全身へ影響をもたらし合併症を誘発するため、全身性疾患とされています。
主な合併症
- 栄養障害(るい痩)
- 骨粗鬆症
- サルコペニア
- 心血管障害
- 抑うつ
- 糖尿病
- 胃潰瘍
- 睡眠時無呼吸症候群
- 肺がん
- 間質性肺炎(CPFE)
- 喘息
特に肺がんは、COPD罹患により喫煙とは独立したリスクとなり、非COPD喫煙者と比較して3-6倍高くなります。
治療
COPDの治療目標は以下の3つです。
- 症状の改善
- 今後の増悪
- 合併症の予防
治療は
- 重症度に応じた薬物療法
- 禁煙指導
- 呼吸リハビリテーション
- 栄養管理
- 酸素療法
- 外科治療
を必要に応じて組み合わせます。
薬物療法
気管支拡張薬(抗コリン薬、β2刺激薬、テオフィリン製剤)が基本となります。
特に吸入薬の使用が推奨されています。
また、重症度や急性増悪時にはステロイド剤や抗菌薬を併用する事もあります。
ワクチン接種
肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチンを接種することで、COPDの増悪を避ける事ができます。
禁煙
喫煙はCOPDの最大のリスクであり、禁煙はCOPDの予防、COPD患者の呼吸機能低下抑制・増悪を減少させ、死亡率を低下させます。
呼吸リハビリテーション
呼吸困難の軽減、運動能力向上を目的としたリハビリを行います。 個々に合わせた目標設定とプログラムを作成し、自宅でも継続して行う事で効果が得られます。
栄養管理
重症COPD患者では40%に体重減少がみられます。 高エネルギー、高蛋白食を基本とし、個々に合わせた栄養指導を行います。
酸素療法
呼吸不全を合併した場合、在宅酸素療法を開始します。 在宅酸素を導入することで自覚症状の改善、生命予後を改善します。 在宅酸素導入後は月1回の通院もしくは訪問診療が必要となります。
手術
肺用量減少術や肺移植を行う場合もあります。 肺移植適応年齢は両肺で54歳、片肺で59歳が上限です。 移植適応となるCOPD患者に高齢者が多い日本では、実際に肺移植が行われた症例は5%程度です。
予後
COPDの死亡率は病期が進行するにつれ悪化しますが、近年では適切な管理・治療を行うことで予後は改善されつつあります。
死因は
- 呼吸不全
- 肺がん
- 心不全
- 感染症
- 気胸
- 肺血管障害
などがあげられます。
終末期には人工呼吸器を要する可能性もあります。
特に禁煙・長期の治療継続がCOPD進行抑制、増悪防止につながるため、診断された場合は定期的に通院することが大切です。